56万字、書けたぞ~~~~~!!!!!!!
問題はこれをどう同人誌にするか!!!……ということで色々考えたり調整したりしてみたので、その記録を残しておこうと思います。
結論:文庫サイズで上中下に分冊(非鈍器!)
この56万字の小説をどんなふうに同人誌にしたのか、まず結論からお話しようと思います!
上巻・中巻・下巻に分かれるかたちで、文庫サイズの3冊組の同人誌として発行しました。
ちなみにページ数は下記の通りです。
- 上巻:458ページ
- 中巻:448ページ
- 下巻:488ページ
こだわった点としては、とにかく『鈍器本にしない』ことです。
何も考えずにこの小説を1冊の同人誌にすると、文庫サイズだと1,500ページくらいになってしまいます。「鈍器本が好き!」という方もいると思うのですが、個人的には、読みにくいし文庫サイズなら500ページが限度だと考えています。鈍器にしないために、今回3冊に分冊するという結論になりました。
もっと細かい装丁や原稿設定については後述します。
50万字以上の小説同人誌をつくる過程
結論をまずお話したところで、この50万字以上の小説同人誌を作った過程について段階に分けてご紹介します。
原稿をする
当然ですがまず原稿をガンガンやります!
約56万字書くのに、およそ3年半かかりました(途中で放置してた時期もかなりありますが…笑) 原稿中はページ数を意識せず、「どうやって本にするか」については後から考えよう!という気持ちで書いていました。
校正する
最後まで書き終えた時点では、この小説は58万字ありました。その後校正を行い、不要な箇所を削ったり修正をして、約56万字まで減りました。
この小説は特に気合いが入っていたので、校正に約3ヶ月の時間を要しました。

こちらの記事で紹介しているように、パソコンで校正を行い、スマホでもチェックし、最終的に試し刷りをして……と何回も確認を繰り返しました。
1冊だけ印刷してもらえる印刷所さんにお願いした校正用の本がこちら。修正箇所のページの端を折っています。
誤字脱字のチェック、いらない表現のカット、矛盾箇所の捜索……など、見直しは徹底的に行いました。ちなみに、校正によって新たな誤字脱字が生まれてしまうこともあり、本当に何度見直してもミスってゼロにならないんだな……と痛感しました……。
サイズの検討
サイズの検討は校正と並行して行いました。
まず自分の中で、サイズはA5・B6・文庫の3択を考えていました(それしか作ったことがないので) 次にB6なら1段組か2段組か、分冊はするか?などについても考え、それぞれのメリット・デメリットを比較しました。
A5サイズ(2段組・500~700ページ)
メリットは以下の通り。
- 分冊しない場合に一番薄い
- おそらく最も印刷料金が安い
デメリットは以下の通り。
- 厚すぎるしかなり重い
- こんなでかくて厚い本誰が読むん?
- 搬入・搬出が大変すぎる
B6サイズ(1段組・900~1,000ページ)
メリットは以下の通り。
- A5よりは薄い
- A5よりは小さいので手に収まりやすい
デメリットは以下の通り。
- A5で良くない?ってポイントが多い
- 台詞が結構多いからスカスカになりそう
- 搬入・搬出が大変すぎる
B6サイズ(2段組・約800ページ)
メリットは以下の通り。
- ギリギリ読むに堪える厚み(主観)
- 台詞が多いから収まりがいい
デメリットは以下の通り。
- 文字を詰め込む割には鈍器
- 搬入・搬出が大変すぎる
B6サイズ(2段組・分冊(約400ページ×2))
メリットは以下の通り。
- 1冊あたりがそこそこ薄く読みやすい
- ノドをそこまで広く取らなくていいので1ページあたりの文字数が比較的多くなる
デメリットは以下の通り。
- 分冊にするなら文庫で良くない?と思ってしまう
- ギリギリ1冊にまとめても良さそうなので分ける意味が無いかも
文庫サイズ(分冊なし・約1,500ページ)
一応検討したけどメリットはないと思いました。デメリットは以下の通り。
- 重くて読みにくすぎる
- マジで誰が読むねん
- 搬入・搬出が最も大変
- 印刷所が限られる
文庫サイズ(3冊分冊(450~500ページ×3))
メリットは以下の通り。
- 軽いし読むのにしんどくない厚み
- 印刷所の選択肢が広い
- 市販のブックカバーを被せたら外出先でも読んでもらえる(非nmmn・オールキャラ健全小説です)
デメリットは以下の通り。
- 一気に読みたい人からするとまとまっていた方が嬉しいのかも?
- 単純に冊数が増えるので管理が大変かも
- 印刷費がかさむ
以上の検討の結果、【文庫サイズで3冊に分冊する】に決めました!
決め手としてはやはり「鈍器にしたくなかった」「最後まで疲れずに読んでほしい」の2点です。
「鈍器にしたくない」は個人的なこだわりですが(400ページで鈍器と呼ぶ方もいるかもしれないですが、私は片手で持てる本は鈍器ではないと考えています)、「最後まで疲れずに読んでほしい」は特に注意したポイントです。自ジャンルはそこそこ長寿になってきたこともあり、お仕事が忙しく家でゆっくり同人誌を読む時間がない……という方が多そうな印象なので、「外出先で読める」というところが良いと思いました。先述の通り、この小説はオールキャラ健全本で挿絵もないので、ブックカバーをかけ替えて電車などで読んでもらえると嬉しいな~と考え、文庫サイズの3冊組を選びました。
A5サイズやB6サイズで1冊にまとめるのも悪くないと思ったんですが、おうちでゆっくり同人誌を読める方がどのくらいいるんだろう?と考えたときに、外に持ち出せることが自分にとってはかなりメリットに感じられました。
印刷所を考える
サイズを決めたので、次は印刷所選定を行います。そこで何より先に私が思ったのは「おたクラブさんの全面箔でカバーを作りたい!!!!!!!!!」でした。


上記の通り見本印刷を頼んでみたり、いろんな方のツイートを参考にして用紙と箔の色を選びました。
有償見本のキャンペーンをやっていない用紙の感じも確かめたかったので、栞の印刷を頼んでみたりもしました。上記は OK ACカード まあか×シャンパンゴールド箔 の組み合わせです。
最終的にどんな装丁にしたのかは、後ほどご紹介します。
ブックカバーをおたクラブさんの全面箔にしよう!と決めたので、次にカバー以外の印刷をどの印刷所にお願いするか考えました。もちろん本体もおたクラブさんにお願いしても良かったんですが、この時点でおたクラブさんに同人誌印刷をお願いしたことがなかったので、これまでに利用したことがある印刷所さんの方が安心かもしれないな…と考えていました。
結果、料金や使える用紙などを比較検討し、印刷通販ちょいのまさんに印刷をお願いすることに決めました。ポイントとしては「めっちゃ安い」「色上質が表紙に使える」「本文用紙に淡クリームキンマリ57kgが使える」の3点です。何より、何回か印刷をお願いしているのでとにかく安心できる、という点も決め手になりました。
発注・地獄のカバー巻き
ブックカバーと本体を違う印刷所にお願いしたので、ブックカバーは自分で巻く必要がありました。細かい手作業が苦手なのでこれがとにかくきつかった……!
たぶん失敗すると思ったのでブックカバーは多めに発注したのですが、これが本当に大正解でした。結構失敗して捨てました(笑) おたクラブさんのブックカバーは一か所折り目をつけてくれているので(スジ入れ加工っていうのかな)不器用な私でもなんとかきれいに巻くことができました。
完成した同人誌の仕様・詳細
こんな感じに仕上がりました! 詳しい装丁を紹介していきます。
ブックカバー
おたクラブ様の全面箔を使用。16営業日プランを選択しましたが、データチェックの3日後に発送されました。
上巻
ケンラン モスグレー×ブラウン箔
上巻には幼少期など過去のエピソードを多数収録しているため、ちょっと懐かしい感じ・セピアっぽい印象を持たせたくてこの用紙と箔を選びました。紙と箔の相性が良くて上品に仕上がったな~と感じています。
中巻
ケンラン スノー×シルバーレインボー箔
この小説は7人組グループの話なので、レインボー箔がどうしても使いたくてこの組み合わせにしました。
場所や傾きなどによって光り方が変わるので、どれだけ見ても飽きない美しいカバーになりました。シルバーレインボー箔最高。
下巻
OK ACカード まあか×シャンパンゴールド箔
グループのリーダーのメンバーカラーが赤なので、最終巻は赤色の用紙を使いました。この組み合わせは一見少し視認性が低いんですが、色の相性はすごく良くてお気に入りです。
同人誌本体
カバーを外すとこんな風になっています。上中下で違う用紙の色にしているのは、カバー巻きの作業をするときに自分が間違えないためです。
- 印刷所:印刷通販ちょいのま様
- サイズ:文庫(A6)
- ページ数:458ページ/448ページ/488ページ
- 本文用紙:淡クリームキンマリ57kg
- 表紙用紙:色上質 最厚口 白茶/クリーム/アイボリー
- その他加工なし
ちょいのまさんには早割のようなものが存在しないので(なくても十分安い)通常料金で発注しました。校了連絡をしてから6営業日で発送されました。

組版
- フォント:源暎こぶり明朝 8.5pt
- 余白:天16mm/地13mm/小口11mm/ノド24mm
- 文字数:40文字(字送り:8.45pt)
- 行数:16行(字送り:12.4pt)
文字サイズはちょっと悩んだんですが、8.5ptにしました。これまで文庫同人誌は8ptで作ってきたんですが、小さくて読みにくい人もいるのかもなぁと思い……。今後は8.5pt固定にすると思います。
また、本文用紙に淡クリームキンマリ57kgを使っていて、ノドも広めにとっているので、450ページを超えた本でもかなり読みやすく作ることができました。
印刷料金のお話
私と同じように文字数が多めの小説同人誌を発行しようとしている方の参考になれば……と思い、印刷料金や発行部数を隠さずに書いてしまおうと思います。
まず、発行部数は20部です(少なすぎて参考にならんがな!と思った方がいたらすみません) 30部と迷ったんですが、在庫の管理に自信がなかったので20部にしました。
ブックカバー
ブックカバーは上中下それぞれ30部ずつ印刷をお願いしました。
印刷料金は、送料を含めて合計11,370円でした。90枚、3つの絵柄でお願いしていることを考えるとめちゃくちゃ安いですよね…!!!!
同人誌
同人誌は上中下、20部ずつ印刷をお願いしました。
料金は合計61,978円でした。60で割ると単価は1,032円なので、こちらもめっちゃ安いです。
トータル金額と頒布額
ブックカバーと同人誌の印刷料金を合計すると、11,370 + 61,978 = 73,348円 になります。余談ですが、この本を作ると決めたとき、予算は10万円以内と考えていたのでかなり下回りました。
発行部数は20部なので、単純に割ると、 73,348 ÷ 20 = 約3,667円 になります。なので印刷費を回収しようとすると、3,700円くらいで頒布しないといけません。ただ普通に考えて?同人誌に3,700円も出すか????????って話ですよね。部数から分かる通り、私は字神ではないし、自ジャンルは流行ジャンルではありません。そんな同人誌に3,700円、いや、3,000円でも出したいと思うか?????? かなり難しいと思いました。
もともと赤字覚悟の自己満足本だと考えていたので、結局3冊セットで2,000円で頒布することに決めました。手に取ってくださった方は「安すぎないですか?」とおっしゃる方もいましたが、同人誌に出せる金額の上限って2,000円くらいかなぁ……というのが私の価値観なので、この頒布金額にしました。小説自体はpixivで全部読めるようにするつもりなので、それも頒布料金を下げた理由のひとつです。
結局鈍器もつくった
「鈍器にはしたくなくってぇ……」と散々言いましたが、なんだかんだ鈍器も作ってしまいました。
おたクラブ神とちょいのま神のおかげで印刷料金が予算以内に収まってくれたので、鈍器を作るお金の余裕が出たんですよね。積極的に新刊を鈍器で作りたくないけど、自分の本を鈍器にしてみたい気持ちはある…という厄介同人女のジレンマが発動してしまいました。
鈍器の装丁
- 印刷所:STAR BOOKS
- サイズ:B6
- 組版:2段組
- ページ数:814ページ
- 本文用紙:淡クリームキンマリ62kg
- 表紙用紙:NEW特レーブル輝き_ゴールド_135K(グロスPP)
- 遊び紙:色上質_黒_厚口
いろいろ調べた結果、少部数で鈍器を作るならスタブさん!!!!と迷うことなく即決しました。毎割60を使ったのでかなり割引が効いてありがたかったです……!!
印刷部数は5部、料金は送料込みで17,357円でした。ページ数を考えると普通にめっちゃ安いと思う。
しかも、5部発注したのに余部が4部ついてきてびっくりしました。こちらも2,000円で頒布を行いました。
「鈍器」と呼ぶのにふさわしい佇まい。笑っちゃうほど分厚い。本文用紙が最も薄いもので淡クリームキンマリ62kgしか選べなくて不安だったんですが、読みやすかったです。
本文はこんな感じです。
- フォント:源暎こぶり明朝 9pt
- 余白:天14mm/地16mm/小口11mm/ノド24mm
- 文字数:21文字(字送り:9.45pt)
- 行数:18行(字送り:12.3pt)
普段B6サイズで同人誌を出すときは1段組にしてるんですが、分厚い本だと2段組が映えるし読みやすいな~と感じられて良かったです。
表紙に使用したNEW特レーブル輝きはかなり薄い用紙で、分厚い本にぴったりです。ただ、本当にめちゃくちゃ薄いので、下のページが透けてしまうことがあります(上図の赤丸のところ、奥付の文字がうっすらと透けています) 遊び紙を前に挟んだのは透け防止のためです。後ろにも挟んだら良かったかも。
イベントで頒布してみた感想
まず思ったのは、「文庫3冊組を持って帰るのって荷物になるやろな……」でした(笑) 一応3冊まとめて入れられる袋を用意して行って、「袋に入れますか?」って聞いたらほとんどの方に「お願いします」と言われました。
驚いたのは、文庫よりもB6鈍器がほしい方が何人かいたこと。手が疲れるし800ページの本って買いたくないよな……と私は勝手に思っていたんですが、B6鈍器の方がほしいって言ってくださる方が時々いたのが意外でした。
以上、50万字以上の小説同人誌を出した記録でした!
こんなにボリュームのある同人誌を(再録以外で)出すことは今後ないと思うので、本当に良い経験になりました。いつもより「楽しみにしてました!」とか「これ買うために来ました!」って言ってくださる方も多くて、3年以上かけて書いた甲斐がありました。何より自分が満足できるものを同人誌の形にできて良かったです!