今回は小説同人誌を初めてつくる方に向けて「小説原稿の基本」を紹介していきます。
紹介するのは、基本的なポイントや、実際私が知らなくて「もっと早く知りたかった!」と同人始めたての頃に思ったことです。小説同人初心者の方のご参考にしていただけると幸いです。
原稿のつくりかたに関して
縦書きで書き、右側で綴じる
国語の教科書と同じです。小説は縦書きで書きましょう。
縦書きで書いた小説は、右綴じで製本します。漫画と同じく左側がひらく方になります。ちなみに、もしなんらかの事情で横書きの本をつくりたい場合は、左綴じで製本します。
wordで縦書き原稿をつくる場合
< ページレイアウト → 文字列の方向 → 縦書き >
を選択します。
フリーのテキストエディタで縦書き原稿をつくる場合
無料のテキストエディタにも縦書きで使えるものがあります。簡単に使えてPDF出力もできるTATEditorが個人的にオススメです。
謎の改行(空行)はいらない
ここで言う「謎の改行(空行)」とは、地の文と会話文の間に改行(空行)をはさむことを指します。
pixivなどwebの横書き小説では、地の文と会話文の間には空行があった方が読みやすいです。しかし、同人誌ではそういった改行(空行)は入れず詰めて書きます。国語の教科書や市販の小説はどれも詰めてありますよね。
しかし、地の文と会話文の間に謎の改行が入った本はどのジャンルでも時々見かけます。
私の周りの体感ですが、
- 絵描きさん…気にならない派が多い
- 字書きさん…気になる派が多い
字書きや小説本をよく読む人ほど「改行が多い小説はスカスカして読みにくい・手に取らない」という方が多いです。商業誌でも縦書き小説は不必要な改行を入れず詰めて書くのが一般的なので、空行を入れすぎないのがベターです。
文頭を字下げする
文頭の字下げとは、地の文の書き出しに1つ全角スペースを入れることです。
pixivなどのweb小説ではあってもなくてもどちらでもOKですが、本にする場合は必要です。せりふなど、かぎかっこ(()「」『』)の前には入れません。
感嘆符・疑問符の後ろには全角スペースを
感嘆符…”!“ / 疑問符…”?”
地の文・せりふ問わず、感嘆符(!)や疑問符(?)の後ろに文章が続く場合は全角スペースを入れます。これもweb小説ではあまり見かけないかもしれませんが、縦書きにする際には守っておきたいルールです。
×NG
「今日の天気は?晴れていますか?」
◎OK
「今日の天気は? 晴れていますか?」
ハート・星・音符などの記号は使わない
web小説ではハートマークなどを使われてる方もいると思いますが、本にする際は記号は使いません。
ただ、ジャンルによっては原作で「☆」や「♪」を付けてしゃべるキャラがいたりしますよね。そういうキャラに関しては、原作に沿って書いているということになるので、「☆」や「♪」を付けても問題ありません。
濁点は崩れないように注意
せりふに「あ゛」などの通常使わない濁点を使う方もいるかもしれません。縦書きにすると崩れてしまうことが多いので入稿前にしっかりチェックしましょう。
< 悪い例 >
MS明朝体で作成した原稿です。何に濁点がついているのか全くわかりません。
縦書きで濁点を使いたい場合、源暎こぶり明朝がおすすめです。こんな感じに濁点を使うことができます。
サイズに合った段組みを
「段組み」って?
例えば、A5サイズの本でよく見かけるこのかたちは「2段組み」です。
この2段組みを文庫サイズでやってしまうと、1行あたりの文字数が少なく、何度も視線がいったりきたりして読みづらいです。段組みは本のサイズによって使い分けます。
- A5…2段組み
- B6…2段組み or 1段組み
- 新書…1段組み
- 文庫…1段組み
B6サイズは2段組みも1段組みも見かけます。短めのせりふが多い書き手さんは1段組みだとすかすかした印象になってしまうかもしれないですね。好みが分かれるところなので、迷っている方はある程度書いてみてから決めるのがおすすめです。
本の装丁に関して
サイズはA5以下!
同人誌でよく見かけるサイズは「B5」「A5」そして最近だと「文庫」です。
B5は漫画やイラスト本だけで使えるサイズだと思ってください。時々B5の小説本を見かけますが、基本的にA5より大きいサイズで小説同人誌はつくりません。
<小説同人誌に適したサイズ>
A5 / B6 / 新書 / 文庫
初心者の方におすすめしたいのはベーシックなA5サイズです。どの印刷所でも取り扱いがあるサイズで、テンプレートも多いです。原稿作成で困ったときにはググればたくさん情報が出てきます。
文庫サイズに憧れを持っている方も多いと思います。最近は文庫サイズを扱っている印刷所さんが増えてきたので、もちろん文庫サイズもおすすめです。ただし割高になってしまう場合が多いので、お金はあんまりかけたくないけどとにかく同人誌がつくりたい!という方はまずA5サイズでつくってみる方がいいと思います。
本文用紙は小説向きの紙を選ぼう
同人誌をつくるときは、本文用紙を選ぶ必要があります。本文用紙には、漫画に向いているものと小説に向いているものがあります。
印刷会社によって扱っている紙に違いがあります。小説に向いているのはこんな紙です。
- 淡クリームキンマリ
- 美弾紙ノヴェルズ
- 書籍紙
クリーム系の紙は分厚い本を読んでいても目が疲れにくくて良いのでおすすめです。
いろんな印刷所で扱いのある「上質紙」は漫画向きです。白い紙なので黒のインクが映えますが、小説の場合長時間読むと目が疲れてくるのでおすすめしません。
紙の厚さの選び方
紙は「厚さ」にも違いがあります。例えば淡クリームキンマリでも、90kg、70kg、62kgなどと種類があります。
数字が大きい方が厚い紙です。厚い紙をページ数の多い本に使うと、分厚く・開きづらく・重くなります。
だいたいの目安はこれくらいです。
- 90kg…100ページまで
- 70kg…300ページまで
- 62kg…100ページ以上
薄い本文用紙を薄い本に使うとよれてしまう場合もあるので、薄い本文用紙はページの多い本に使うのがベターです。逆に、厚い本文用紙で分厚い本を作ると重くなり、搬出などがかなり大変です。ページ数に合った紙を選びましょう。
楽しい本づくりを!
いろんなポイントをご紹介してきましたが、何より楽しくつくることが第一です!
それが本当にやりたいことならば、B5サイズ・横書き・真っ赤な紙にでっかい文字・♪マークだらけの本だっていいんです!!!(読んでくれる方は少なくなると思いますが…)
自分が「楽しい!! 好き!!!」と思える同人誌を目指してみてください!
以上、初心者の方向けの、同人誌で気を付けるポイントのご紹介でした。他に、これも知っておいた方がいいかも…!と思うことがあれば追加していきます。